キスがしたくてしたくて

 

初めて彼女ができたのは高校1年生の時。

相手は1つ上の先輩でした。

 

山下美咲という名前のその子は、少しギャルっぽいけど目がくりっとした美少女で、根暗な私とはどう見ても不釣り合いでした。

 

美咲さんの方から「付き合おっか」と言われて交際がスタートしたのです。

 

当時の私はとにかくキスがしたくてたまりませんでした。

 

美咲さんと会うと唇ばかりに目が行き、初めてのキスの味を想像して悶々とする日々を過ごしていたのです。

 

そんな私の態度を美咲さんは見抜いていて、

「いつも私の唇ばかり見てるよね?」

と、ついに直接指摘されてしまいました。

 

「実はキスをしたことがなくて...」

 

正直に告白すると美咲さんは小悪魔のような笑みを浮かべて、私をからかうのです。

 

「へ〜、わたしとちゅーしたいんだ。どんなちゅーがいいのかなぁ?」

 

そう言って美咲さんは唇をすぼめ、ちゅちゅちゅと鳥のさえずりのような音を出して私の耳元に近づきます。

 

「なんなら舌入れてあげよっか?私の舌で出頭くんの口の中、かき回してあげる。よだれた〜っぷり流し込んで、ぐっちょぐっちょの変態なキス、1日中してあ・げ・る♡」

 

いったいどこで覚えてくるのか、美咲さんは淫語のようなセリフを浴びせかけます。

 

「また私とのキス想像してるんでしょ。私の唾液まみれのベロチューでフル勃起させてあげる♡」

 

「鼻つまんで息できないようにして、舌ねじこんで口の中思いっきり舐め回してから唾液流し込んで。それがファーストキス。ヤバくない?笑」

 

こんなこと言われたらもう我慢できません。

なのにいざキスしようとすると、美咲さんは「まだダメ〜」と拒むのです。

 

これ見よがしにリップを塗ってテカテカになった唇を超至近距離まで近づけて、吐息が私の唇にかかっているのに、触れるのはお預け。

 

「この唇腫れるまでキスしたい…そして腫れた唇を見てもっと興奮して激しいキスしてまた腫れて…」

 

私よりも彼女の方がキスに対して貪欲だったんじゃないかと思います。

なのにキスできない。

そんな状況が数ヶ月続き、結局私たちはキスせずに別れました。

 

ファーストキスはいつになるのだろう。

もしかしたら一生できないのではないか。

 

高校1年生の私は勉強そっちのけでキスのことばかり考えていたのでした。